孤島の鬼

日々の備忘録。文章表現、感情表現の練習の場です。更新はなるべく毎日・・・

【読書】夜歩く【読了:ネタバレあり】

横溝正史の夜歩く、一気に読んだが非常に面白かった。劇中作であることが後半に発表されるが、それ自体がトリックであることから信頼できない語り部ものですかね。登場人物がばらばらと出てきて徐々に全体像が浮かび上がってくるが、その辺りはもう少し整理できないこともなさそうかな。それでも3流作家という設定が生きてくるのでここも特に問題なし。金田一耕助が登場するもあまり活躍せず、といういつものパターンもここではうまくミスリードとなっていて上手。

全体的なおどろおどろしい雰囲気を楽しむものだと思っていたので、物語の語り口も時代がかっていてよかった。これもミスリードにつながるのだが。主人公と直記の歪な関係性が新しいと思ったが、古い作品だよなあ。今の時代でも十分通用するように思う。

2人のせむし男の首切りの理由や、同じ場所に銃痕を残すなど、現代の科学捜査の前では無理があるとは思うが、それも時代性ということでご愛嬌。科学捜査は名探偵を殺すのか、興味深いところだ。科学捜査と共存する道と、排除する2つの道があると思う。後者は雪山の山荘もの、クローズドサークルものになるのだろう。前者はどういう状況だろうか。いい作品があれば教えていただきたい。

今後、AI技術の発展によって、AI探偵なんてのも出てくるのかも。そうするともはやSFになるなあ。そんな時代の小説もどうなるんだろうか。AIで書いた小説が文学賞を受賞、なんてフェイクニュースもあったが、小説を書くという行為そのものが代替されてしまう可能性もあるのではないか。小説のような物語はできなくでも、歌の歌詞のような、詩のような、緩やかな連想を許す形態であればむしろいい味を生み出すのかなあ。

そんな時代に人間は何ができるのか。よく言われる企画系、先ほどあげた小説を書く行為もAIの代替は難しいとされているが、どこまでが代替できて、どこからが人間にしかできないのか、だんだんとこの線引きが明確になってくるように思う。そして人間にできる範囲がだんだんと狭まってくるのだろう。

それがいつになるのか。おそらく10年、20年では難しいのでは無いかと思うが、30年となると、どうだろう。できてそうな気もするなあ。最近の技術発展も目覚ましいから、20年では難しい、というのも個人的な安易な予測であるから、実際にはもっと早いスピードでいろいろできるようになるのかもしれない。

人間がそういった時代に何をして暮らすのか、よく言われるのは芸術系や、エンタメであると言われるが、そういうの苦手なんだよな。。。楽器を少しいじったりしたこともあったけど、自分の才能のなさにげんなりすることもおおいし。

とりとめもない話になってしまったが、夜歩く、おすすめ。せむしにはふりがなふって欲しかったな。(自分が気がつかなかっただけか?)次は本陣殺人事件を読みます。