孤島の鬼

日々の備忘録。文章表現、感情表現の練習の場です。更新はなるべく毎日・・・

麻耶雄嵩の神様シリーズ

先日再開されたばかりの図書館で麻耶雄嵩の神様シリーズをレンタルした。ミステリディケイドで見たタイトルだったのと、本棚に神様ゲームとさよなら神様の2作が並んで置いていたからだ。それ以外のタイトルは置いてなかったから、もしかすると誰かがこのシリーズを注文して、読んで返した直後だったのかもしれない。

さて、神様ゲーム自体は、児童書の体裁をとっている。その雰囲気に懐かしい気持ちになりながら読み進めたが、内容はとても児童書向けとは言えないものだった。

毎年の誕生日、ろうそくが一本だけ残ってしまうことから、深読みして誕生日が正しくないのでは?と思うような猜疑心の強い子が主人公。猜疑心というか、小学生特有の妄想力というか。そんな彼が、クラスでも存在感の薄い鈴木と掃除の時間、2人きりで話をしたところから話が進む。最近この界隈で発生している猫殺しの犯人を知っているというのだ。その名前を聞いてもピンとこない主人公。そりゃそうだ。犯罪者が身近に、なんてことはそれこそミステリ小説でないとあり得ない。

その名前を頼りに、犯人に近づきだすと、さらなる事件が。主人公が所属している少年探偵団が根城にしていた秘密基地でクラスメイトが死んでいたのだ、、、

この事件が今作のメインの事件。猫殺しで鈴木の神性を描写しつつ、それを前提とした事件が起きる。普通の小学生だったら当然真相にはたどり着けない。だって警察のような捜査能力を持っていないのだから。それでもこれはフィクションだから、かなり肉薄するところまで行く。あと一歩、通常ならあきらめてしまうような話も、鈴木の神託があればこそ、無理やりな解決策を見出してしまう。

鈴木を信じるわけではないが、、、というスタンスもラストには読者はその存在を本物として認め推理を展開することだろう。ラストのどんでん返しもうまく決まるが、その内容や主人公のことを考えると、暗い気持ちになる。こんなのジュブナイル小説として出しちゃだめだろう。媒体のミスマッチで衝撃を生み出す、古くはひぐらし、最近だとドキドキ文学部とか?こういうのはある意味飛び道具だけど、面白いよねえ。

続編であるさよなら神様もなかなか後味が悪い。鈴木の神託を受けることで事件は解決するが、それで誰も幸せにならない。事件当時者はもちろん、解決する探偵ですら不幸になっていく。真実を知るということはいいことばかりじゃない、むしろ人の本質は悪で、それを白日の下にさらすなら嫌なことしか起きない、という強いメッセージを感じる。

ラストのハートマークも、主人公のロジックの放棄を宣言するとともに、読者にもそれを捨てるように促す。これがまた嫌な気持ちになる。すべてが論理的に、ロジカルに組み立てられた世界なんてないし、だとしたらそれはこんな風に嫌な世界だ、そんな世界を君は好んでいるか、と追及されている気分になる。

しかし、ミステリとしては2作とも上質である。この巣ごもり時期にぜひ読んでほしい。