孤島の鬼

日々の備忘録。文章表現、感情表現の練習の場です。更新はなるべく毎日・・・

【読書】ウロボロスの純正音律【ネタバレあり】

竹本健治氏のウロボロスの純正音律読了。500ページ超えの大作。出だしの簡単なあらすじはミステリ小説家である竹本健治が、ある出版社の編集者から漫画を書いて見ないかと持ちかけられるところから始まる。もともと若い頃は漫画家志望だった竹本はその誘いに乗るが、漫画作成となるとたくさんのアシスタントを集める必要がある。ミステリ小説家である自身の人脈を生かして、同業のミステリ小説家、ミステリ好きの現役漫画家、ミステリ評論家、ミステリファンなどに声をかける。門外漢が書く漫画のため、関わった人間が大量であることに価値を求めたのだ。しかしそれだけの人数を集めるとなると場所の問題が出てくる。声をかけてくれた編集者に相談すると、では自宅を使われてはどうかと提案される。その自宅は、ミステリに登場しそうな、雰囲気のある洋館だった。これに歓喜するミステリ関係者たち。さらにこの洋館を立てた編集者の祖父は、博覧強記、様々なジャンルに精通していることもあって、内部に設けた図書館には古いミステリの原本なども。さらに喜ぶミステリファン。漫画制作も並行しながら、ある種の文化祭的高揚感に包まれるなか、集まった一人が、人間業とは思えない力によって、暖炉にぎゅうぎゅうに詰め込まれて殺されてしまう・・・

主人公が作者と同姓同名というところがこの作品の大きな特徴で、登場するミステリ作家も実在の人物。京極夏彦綾辻なども事件が起きてからはそれぞれのキャラクターを生かして探偵役など務める。出てくる殺人事件も、過去の名作ミステリを模倣した作中のミステリファンだけではなく、実際の読者もお祭り感が味わえる一作。

過去のウロボロスシリーズ、1作は読んだと思うのだけど、その時はとりつくとか、芸子さんが出てきたような・・・面白かったものの、これもいまいち乗り切れなかったが、今作もお祭り感が楽しいながら、オチそれかい!という印象。

モルグ街の殺人と姑獲鳥の夏を足した1作なんだけど、後者のオチについては今更ながら納得してないんだよなあ。。。昔読んだ時にはキャラクターの面白さから、勢いで誤魔化されて充実した読書体験だった!と思ったのだが、今から考えるとねえ。

この作品自体も2006年の作品で15年近く前、姑獲鳥の夏も94年の作品だから25年以上前の作品。いつの作品について、いつ語ってるんだと自分でも思うが、そういうもんよね。

小栗虫太郎黒死館殺人事件と奇妙な符合を見せる玲瓏館。オチとしては逆にこの建物が黒死館の元ネタになっていたというもの。

途中で出てくる囲碁のくだり、囲碁のルールも知らない自分にとっては、少々退屈。というか凄さがよくわからん・・・ちょっと覚えてみるかな。